インフルエンザで熱が出ている日の事だった。
「家が揺れている。あぁ、また熱があがり始めたのか...」と目を覚ます。
家が揺れていたのは熱のせいではなく、地震だった。
母親というのは不思議なもので、いざとなると
熱が出ていようが、寝ぼけていようが、瞬時に飛んで行って
二人の子供を自分の懐に抱きしめる事が出来るのだった。
棚に飾ってたブランデーや、飾り皿が割れてしまったので
揺れが治まったあと、熱でふらふらしながらそれらを片付けた。
すっかり自宅付近が震源地だと思い込んでいた私は
付けたテレビの前で被害を知り、呆然とした。
宝塚に住んでいた従兄弟は、震災の日が予定日だった。
電話が繋がらなくて心配したけど、二日後に無事女の子を出産した。
それから一ヶ月後、
当時描いていた手描きpopの仲間に誘われて
被災地支援のためのpop展に作品を出した。
大変な中頑張っている人たちに向かって
「頑張って」なんて、キレイ事は言いたくなかったので、何を描くべきか悩んだ。
私が描いたpopは、新聞紙にくるまれた真っ赤なリンゴたちだった。
人は、人が思っているより強いと思いたかったから。
それから約二ヶ月後。
ヘアサロン開業のために、店舗を探していて
立ち寄ったとなりの喫茶店のテレビで、地下鉄サリン事件を知った。
その二ヶ月後、
喫茶店の隣に、自分のお店がオープンした。
阪神大震災の日が来るたび
その年にあった出来事を鮮明に思い出す。
いろんな意味で、忘れられない年である。
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